ふーちーとの出会い
突然の電話
母からの連絡
ふーちーとの出会いは、母からの電話がきっかけでした。

あ、もしもし、主?
実はな、隣のおじさんの畑の柿の木のところに、子猫が捨てられとってな…。
母の声はいつになく沈んでいました。

飼いたいんやけど、うちももう5匹おるから、父さんに反対されてさ…。
もう、かわいそうで、かわいそうで……。
あんなに辛そうな母の声を聞いたのは、記憶にないほどでした。
これは後から分かったことですが、その子猫たちは2箇所に分けて、2匹ずつ捨てられていたそうです。
合計4匹。しかし、生き残ったのはただ1匹。
── ふーちーだけでした。
段ボールの中には毛布が敷いてあったものの、食べ物は何もなく、生きていくにはあまりにも過酷な状況だったそうです。
その話を聞いた瞬間、余りの胸糞悪さに、電話口の声が、思わず震えました。
約束
「とにかく、土曜日に様子を見に行く」と約束をし、電話を切りました。
それまでの2日間、母にはふーちーのお世話をお願いしましたが、その時点で私の心はほとんど決まっていました。
きっと母も、私の言葉を聞いて“ふーちーを引き取ってくれるだろう”と確信したのでしょう。
助けたいけれど、どうすることもできない葛藤に、ここ数日母の声は沈んでいました。
でも、私が「様子を見に行く」と言った途端、明るさが戻るのを感じました。
翌日には「バンダナで首輪を作ってあげたよ!」と写真まで送られてきました。
これは、もう決定事項だなぁ、と。
ふーちーの強さ
ふーちーは、とても賢い子でした。
実家にいた猫たち全員に、自ら挨拶をしに行き、母から餌をもらうためにお伺いを立てているようにも見えました。
そんなふーちーの積極性に、先住猫たちも驚きつつ、誰も手を出すことはありませんでした。
なにより、彼らなりに、ふーちーの過酷な状況を理解しているようでした。
約束の日
約束の土曜日
そして、約束の土曜日。
主人の仕事の都合もあり、実家に着いたのは夕方でした。
母は、すぐにふーちーの話をすることなく、「疲れたやろ?」と食事を用意してくれました。
食卓を囲みながら、ふーちーについて話してくれました。
実家の隣の畑。木の根元に、メスの子猫とともに捨てられていたこと。
もう1匹は外敵に襲われ、命を落としたこと。
そして、その子が亡くなるまでの間、ふーちーが懸命にその子を守ろうとしていたこと。
その話を聞いた瞬間、私の決意は固まりました。
運命の瞬間
食後、寝ている主人をそのままにして、私はふーちーを探しに外へ出ました。
しかし、どこを探しても見当たりません。半ば諦めかけたその時──。
隣のおばさんが、生ごみを畑へ捨てに行く後ろを、ちょこちょこと白い影がついて歩いているのが見えました。
ふーちーだ。
私の視線に気づいたおばさんが、何かを察したように近づいてきて、興奮気味に尋ねました。

この子、引き取ってくれるん?
即答できなかった私は、寝ている主人をたたき起こし、一緒にふーちーの元へ。
すると、ふーちーは賢くも、決定権のある主人の足元に擦り寄り、「にゃあ」とひと鳴きしました。
酔いもすっかり冷めた主人は、やせ細ったふーちーの頭を撫でながら、ひと言。

そうやなぁ…、しらたまかな
それは、「家族に迎えよう」という宣言でした。
ただ、その日は夜も遅かったため、一旦自宅へ戻り、迎え入れの準備をすることに。
命に責任を持つということ
「飼いたくても飼えない」という言葉は、一見冷たく聞こえるかもしれません。
でも、本当にその子の未来を考えた上での判断であれば、それは“責任ある決断”だと思います。
両親も還暦間近。何かあったとき、最後まで責任を持てる自信がない──。
だからこそ、私が引き取ることを伝えました。
お迎え
ふーちーの現実
翌日、改めて明るい昼間に見たふーちーの姿は、想像以上に悲惨なものでした。
猫風邪のせいで目はほとんど開かず、鼻水と目やにがこびりつき、顔全体が黄色く汚れていました。
何より、ガリガリに痩せ細っていたのです。
キャリーに入れて車へ乗せようとすると、隣のおばさんが涙目で駆け寄ってきて、私の手に一万円を握らせました。

本当に……ありがとう……!
その気持ちは、ふーちーの病院代としてありがたく使わせていただきました。
ふーちー、家猫になる
家に連れて帰り、まずは顔を拭いてあげました。
こびりついた目やにを何度も何度も拭い、ようやく見えたふーちーの瞳。
それは、透き通ったセージグリーンでした。
少しずつ汚れが落ちるのと同時に、猫風邪特有の膿んだような匂いも和らいでいきました。
それでもくしゃみと目やには続き、翌週、病院へ。
健康診断の結果、問題はなく、検便も陰性。
後に【肥大型心筋症】と診断されるのですが、──そのお話は、また、別の機会に。
ちなみにその時の写真がこちらです
風邪が治った途端、バクイケ化してます。
ポテンシャルお化け……!


目やにが落ち着くと、しれっとお澄まし顔で家猫生活スタート。
気難しいたま先生にも、自ら挨拶し、あっという間に舎弟ポジションにおさまりました。
たま先生は少し引きつつも、渋々受け入れてくれたようです。
ふーちーの寝顔
ふちの寝顔好きなんです、どうぞお納めください




最後に
本日も、お付き合い頂き、ありがとうございます。
よければ、また、ふーちーに会いに来てくださいね。
心より、お待ちしております。