「迷い猫が選んだのは、主人だった」ー コインランドリーから始まった家族の物語 ー

たま先生

たま先生との出会い

家族が増える時の心構え

家族になるということは、一つの命に責任を持つということです。
可哀相だから、と中途半端な気持ちで縁を繋ぐと、きっと自分も相手も苦しむことになる。
猫が好きだからこそ、引き取る時には、猫と自分の人生をしっかり見つめ合わせて考えないといけない。
私がそういう風に考える様になったのは、たま先生との出会いがきっかけでした。

運命の出会いはコインランドリーで

あの日、私はただ洗濯物を乾かしにコインランドリーへ行っただけでした。
それが人生を変える出会いになるとは、まったく想像もしていませんでした。

しかも、なぜかその日は道を間違えるという珍事件が発生。
普段なら絶対に曲がらない場所で右折し、そのまま迷子状態に突入。

いや、もう、住宅街、しんどっ!!

…あ、コンビニある…

住宅街迷子地獄で、削られたメンタルポイントを回復しようと、目を向けたコンビニの横には、当初の目的であったコインランドリーが併設されていたのです。

まさかここに、先生が待ち受けているとは、この時の私は知る由もなかったのです……。

コーヒーと三色毛玉

乾燥機が回っている間、私は喉の渇きを潤すべく自販機でコーヒーを購入。
ちょうど雨も上がったので、自販機の横のブロックに腰掛けて、のんびり飲んでいました。

がっ!ごん!ごっ…こっ…こつ…ががっ!

…え?なん?霊障?

確かにさっき地面に置いたはずのコーヒーの缶が、不思議な音を立てている。
不思議と表現するには少々物騒な音でしたが。

恐る恐る視線を落とすと……。

そこにいたのは、まだ生後2か月ほどの小さな三毛猫
周りに母猫や兄弟の姿はなく、ひとりぼっち。

子猫は、ひとりを不安に思うどころか、コーヒーの缶に興味津々
それどころか、「いいだろう、かかってこい!」と言わんばかりに、猫パンチを繰り出しているではないか。

うおおい、待て、待て、待て!
猫にカフェインって ダメなやつでは!?

うお!先生!コーヒーは!!

なにとぞ、おやめくだされ!!

私に関しては、既にこの時から、先生呼びでした。
もはや、訳の分からない日本語を言いながら、慌てて缶を遠ざけると、三毛猫は 「はぁん?」というような物騒な顔をしながら、今度は隣にいた彼(今の主人)の足元にすり寄っていく
しかも、足にまとわりついて離れない。

「いいだろう、お前に決めた」と言わんばかりの不遜顔。

まぁ、その頃から主人に対しては、乙女対応でしたが。

突然の依頼

さすがにこんな小さな子猫をこのまま置いていくのは心配。
もしかしたら、誰かの飼い猫なのでは?と思い、周囲の人に聞いてみることに。
でも、コインランドリーの利用客に聞いてみても、答えはみんな同じ。

「 知らない」

そんな中、さっき話しかけたおじいさんが慌てて走り寄ってきました。

…えええ…せ、先生…、ヒッチハイクでおいでなすったんですか!?
なんという豪胆!!

おじいさんは申し訳なさそうに深々と頭を下げながらこう言いました。

そう言われてしまえば、放っておけなくなるのが猫好きの性。
「私たちが、保護しても大丈夫ですか?」と言うと、おじいさんは深々と頭を下げて、「頼みます」と言い、どこか安心した表情で去っていきました。

こうして、私たちは子猫を車に乗せ、病院へ連れて行くことにしたのです。
子猫に見初められた主人は、すっかり上機嫌で、子猫を抱きながら車に乗り込みました。

中途半端な善意

動物病院での洗礼

しかし、その日は日曜日。
近くの動物病院はどこも休診でした。

急を要する様子もなかったので、翌日改めて病院へ行くことにし、ホームセンターでキャリーケース・猫のごはん・簡易トイレ(段ボール)を用意。
こうして、我が家での最初の夜を迎えました。

翌朝、入社以来初めての有休をとり、動物病院へ。

診察の結果、子猫はとても健康な女の子で、特に問題はなし。
ホッとしたのも束の間、獣医さんの言葉が胸に刺さりました。

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来院した当初から素っ気ない物言いの先生ではありましたが、決して冷たい先生ではありません。
むしろ、動物に対しては、とても優しい方なので、尚更ずっしりと重さのある言葉に感じました。

同時に、自分たちの行動が、偽善的で責任感がないと言われているようで、悔しさと悲しさで、少し落ち込みました。

里親探し

病院から帰る道中、主人も、私も無言でした。
お互いに、獣医さんの言葉に、考えさせられるものがあったからだと思います。

そんなもやもやとした気持ちを抱えたまま、里親探しを始めました。
その後、知り合いに声をかけ里親探しを始めたものの、断られるたびに ホッとする自分がいました。

何より、獣医さんの言葉が胸に引っかかって、行動と気持ちがちぐはぐになっている感覚でした。
そして、命について深く考えさせられたきっかけになった気がします。

結局、里親探しは諦めました。
そして、たま先生には、正式に我が家の家族になって頂きました。

命を預かる覚悟

猫と暮らすということは、命の責任を持つということ

猫と暮らすということは、命の責任を持つことです。
その覚悟がないまま、中途半端な優しさで、猫を飼うことはして欲しくないと思います。

猫を飼おうと思っている方、そして、すでに猫と暮らしている方は、どうかその覚悟を持った上で、猫ちゃんとの人生を謳歌してもらえたらなぁ、と思います。

先生を迎えて、訪れた変化

我が家は、たま先生を迎えたことで、大きな変化が訪れました。

  • たま先生のお世話をすることをきっかけに、主人と同棲することになった。
  • 動物を大事にする姿を見て、結婚を決意。
  • たま先生が自由に過ごせる家を建てよう!と奮起し、結婚と同時にマイホームを建てた。

私の人生が大きく変化する時、たま先生はいつも傍に居てくれた、かけがえのない存在です。
たま先生との付き合いも10年を越え、すっかりおばあちゃんになりました。

歩くのも遅くなり、吐くことも多くなりましたが、気の強さは10年経っても変わりません。
まだまだ元気で長生きして欲しいと思います。
そして、たま先生の毎日が、幸せなものであるよう、世話係として尽力したいと思います。

最後に

ここまでお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
よければ、また、たま先生に会いに来てくださいね。
心より、お待ちしております。

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