母猫は戻ってこなかった——取り残された小さな命を守る決意

ハギ

ハギちゃんとの出会い

タイミング

出会い

私がハギちゃんと出会ったのは、入社して二年目の九月のこと。
朝、出勤して会社の玄関を掃除していると、倉庫のほうから社長の声が聞こえてきました。
何事かと思いながら倉庫へ向かうと、社長がコンテナの中を覗き込んでいます。

コンテナの中に、子猫が3匹おるわ!

覗き込むと、錆びたコンテナの片隅で、3匹の子猫が折り重なるように眠っていました。
何せ工具や材料、重機などで一杯の倉庫なので、隠れるには持ってこいの場所でした。
体に錆がついてしまっているのが気の毒で、社長は地面に布を敷き、母猫のために餌を置いてくれました。

◆ 発見時:コンテナの中で折り重なって眠る子猫たち
◆ 発見時:コンテナの中で折り重なって眠る子猫たち

気掛かり

お昼休み、自販機でコーヒーを買うついでに、子猫たちの様子を見に行きました。
すると、朝は3匹いたはずの子猫が、明らかに減っています。

しばらく倉庫の外で様子をうかがっていると、母猫が子猫を1匹ずつ咥え、どこかへ運んでいるのが見えました。
きっと、人間の気配を感じ、安全な場所に引っ越しているのでしょう。

しかし、午後3時の休憩時間、社長が倉庫を覗くと、残っていたのは1匹だけ。
しかも、その子猫は母猫を呼ぶように、大声で鳴いていたそうです。

待機

親猫が迎えに来るかもしれん…。
もう少し待ってみよう。

そう言って、夕方まで様子を見ることにしました。
けれど、母猫は戻ってこず、そのうちに子猫は鳴くことすらやめてしまいました。

焦った社長は事務所へ駆け込んできて、私を呼びます。
コンテナの中に取り残されていたのは、ハチワレ模様の小さなオスの子猫。

決断

私と社長は、偶然にも同じ動物病院をかかりつけにしていたので、すぐに獣医さんへ連絡。
社長が先に病院へ向かい、私は急いで子猫を段ボール箱に入れました。

会社に時々やってくる社長の愛犬のトイレシートと、使っていないクッションを拝借し、段ボールの中に敷き詰めました。
ほんの少しでも、子猫が安心できるように。

こうして、たった1匹残された子猫…。
——ハギちゃんを連れて、病院へ向かいました。

◆ 病院へ搬送される子猫
◆ 病院へ搬送されるハギちゃん

保護

動物病院

病院に着くと、すでに社長が哺乳瓶とミルクを購入して待ってくれていました。
すぐに処置室へ通され、糞便検査を受けます。

検査結果は良好です。
ただ……。

獣医さんは、厳しい表情で言いました。

この子、自力でミルクを飲む力がほとんどないですね。
このままだと、助からないかもしれません。

生きようとしている

命の危機を前に、獣医さんは、根気強く、ミルクを飲ませようとしてくれていました。
哺乳瓶を口元に近づけると、最初は首を振ってしまい、うまく飲むことが出来ませんでした。
口の周りをミルクで、べしゃべしゃに汚しながらも、なんとか少しだけ飲んでくれました。

——この子は、まだ生きようとしている。

その日は、私がハギちゃんを家に連れ帰ることにしました。
帰りの車内、信号で止まるたびに、ふと箱の中を覗き込みます。

……うう、…
……ちゃんと呼吸してる?
……ちゃんと生きてる?

そんなことばかり考えながら、家の近くのホームセンターに寄り、必要なものを買い揃えました。

◆ 連れ帰った直後の子猫
◆ 連れ帰った直後のハギちゃん

今日から、仮親!

仮親宣言

なんとか、我が家に到着。
段ボール箱を抱えたまま、2階へ上がり、「本日より、仮親を始めます」と宣言。
突然のことに、主人は唖然とし、手に持っていたPS5のコントローラーの操作を誤りました。

はっ!はっ!ギミック間違えた!!
…ぇ…、え…!?

彼の動揺をよそに、私はハギちゃんの寝床を整え、そっとキャリーの中へ。
しかし、連れ帰った直後は、一言も声を出しませんでした。

大丈夫かな……。

不安が募る中、夜の9時を過ぎた頃、ようやく初めての鳴き声が聞こえてきました。
お腹がすいたのかもしれない。

急いでミルクを作り、部屋へ戻ると、そこへ駆け寄ってきたのは……。
——世話焼きおじさんこと、我が家の大黒柱。

世話焼きおじさん、爆誕

ここまで小さい子猫を初めてみた世話焼きおじさんは、率先してハギちゃんのお世話を始めました。

こうして、ハギちゃんの保護1日目が終わりました。
そして私たち夫婦は、生後3日足らずの小さな命を育てることに。
その後の様子は、また次回お届けしますね。

最後に

ここまで、お付き合い頂き、ありがとうございました。
よければ、また、ハギちゃんに会いに来てくださいね。
心より、お待ちしております。

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