ハギちゃんとの出会い
タイミング
出会い
私がハギちゃんと出会ったのは、入社して二年目の九月のこと。
朝、出勤して会社の玄関を掃除していると、倉庫のほうから社長の声が聞こえてきました。
何事かと思いながら倉庫へ向かうと、社長がコンテナの中を覗き込んでいます。

コンテナの中に、子猫が3匹おるわ!
覗き込むと、錆びたコンテナの片隅で、3匹の子猫が折り重なるように眠っていました。
何せ工具や材料、重機などで一杯の倉庫なので、隠れるには持ってこいの場所でした。
体に錆がついてしまっているのが気の毒で、社長は地面に布を敷き、母猫のために餌を置いてくれました。

気掛かり
お昼休み、自販機でコーヒーを買うついでに、子猫たちの様子を見に行きました。
すると、朝は3匹いたはずの子猫が、明らかに減っています。
しばらく倉庫の外で様子をうかがっていると、母猫が子猫を1匹ずつ咥え、どこかへ運んでいるのが見えました。
きっと、人間の気配を感じ、安全な場所に引っ越しているのでしょう。
しかし、午後3時の休憩時間、社長が倉庫を覗くと、残っていたのは1匹だけ。
しかも、その子猫は母猫を呼ぶように、大声で鳴いていたそうです。
待機

親猫が迎えに来るかもしれん…。
もう少し待ってみよう。
そう言って、夕方まで様子を見ることにしました。
けれど、母猫は戻ってこず、そのうちに子猫は鳴くことすらやめてしまいました。
焦った社長は事務所へ駆け込んできて、私を呼びます。
コンテナの中に取り残されていたのは、ハチワレ模様の小さなオスの子猫。
決断
私と社長は、偶然にも同じ動物病院をかかりつけにしていたので、すぐに獣医さんへ連絡。
社長が先に病院へ向かい、私は急いで子猫を段ボール箱に入れました。
会社に時々やってくる社長の愛犬のトイレシートと、使っていないクッションを拝借し、段ボールの中に敷き詰めました。
ほんの少しでも、子猫が安心できるように。
こうして、たった1匹残された子猫…。
——ハギちゃんを連れて、病院へ向かいました。

保護
動物病院
病院に着くと、すでに社長が哺乳瓶とミルクを購入して待ってくれていました。
すぐに処置室へ通され、糞便検査を受けます。

検査結果は良好です。
ただ……。
獣医さんは、厳しい表情で言いました。

この子、自力でミルクを飲む力がほとんどないですね。
このままだと、助からないかもしれません。
生きようとしている
命の危機を前に、獣医さんは、根気強く、ミルクを飲ませようとしてくれていました。
哺乳瓶を口元に近づけると、最初は首を振ってしまい、うまく飲むことが出来ませんでした。
口の周りをミルクで、べしゃべしゃに汚しながらも、なんとか少しだけ飲んでくれました。
——この子は、まだ生きようとしている。
その日は、私がハギちゃんを家に連れ帰ることにしました。
帰りの車内、信号で止まるたびに、ふと箱の中を覗き込みます。

……うう、…。
……ちゃんと呼吸してる?
……ちゃんと生きてる?
そんなことばかり考えながら、家の近くのホームセンターに寄り、必要なものを買い揃えました。

今日から、仮親!
仮親宣言
なんとか、我が家に到着。
段ボール箱を抱えたまま、2階へ上がり、「本日より、仮親を始めます」と宣言。
突然のことに、主人は唖然とし、手に持っていたPS5のコントローラーの操作を誤りました。

はっ!はっ!ギミック間違えた!!
…ぇ…、え…!?
彼の動揺をよそに、私はハギちゃんの寝床を整え、そっとキャリーの中へ。
しかし、連れ帰った直後は、一言も声を出しませんでした。

大丈夫かな……。
不安が募る中、夜の9時を過ぎた頃、ようやく初めての鳴き声が聞こえてきました。
お腹がすいたのかもしれない。
急いでミルクを作り、部屋へ戻ると、そこへ駆け寄ってきたのは……。
——世話焼きおじさんこと、我が家の大黒柱。
世話焼きおじさん、爆誕
ここまで小さい子猫を初めてみた世話焼きおじさんは、率先してハギちゃんのお世話を始めました。
こうして、ハギちゃんの保護1日目が終わりました。
そして私たち夫婦は、生後3日足らずの小さな命を育てることに。
その後の様子は、また次回お届けしますね。
最後に
ここまで、お付き合い頂き、ありがとうございました。
よければ、また、ハギちゃんに会いに来てくださいね。
心より、お待ちしております。
コメント